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遺伝学的手法

修士を今年修了した学生が今日研究室を去りました。大部分の人は明日研修先のホテルに行くようです。また会えるとはいえ別れは寂しいものです。

そのうちの一人の学生は私と一緒に部分的に研究をしました。ある遺伝子の発現を指標に、特定の環境適応応答がおかしくなっている変異体の単離を進めました。変異体が取れてその変異遺伝子が特定できれば、その遺伝子はその環境適応に重要な役割を果たすことがわかる、というものです。彼と共同でいくつかの変異体を単離することができました。今後その原因遺伝子を見つける予定です。時間がかかりますが大きな仕事になりそうです。

このように特定の表現型を指標に原因遺伝子を見つけることを順遺伝学と呼びます。これに対して、ゲノム塩基配列情報を基に遺伝子を特定し、その変異体を作成することを逆遺伝学と呼びます。今は様々な生物のゲノム塩基配列が決まってきておりかつ手っ取り早く実験に取りかかれるため、遺伝子研究では逆遺伝学的手法が主流となってきています。しかし特定の表現型を司る遺伝子機能を知るためにはまだまだ順遺伝学的手法は重要です。

ある研究分野の第一人者になるには順遺伝学的手法で新しい遺伝子を特定することは重要と思われます。そのような実験で取られた遺伝子はその人のもの、という感覚が研究者コミュニティーの中で形成されるからです。その点で特に若い研究者は順遺伝学的研究手法をある程度取り入れる必要があるように思います。なにか面白い遺伝子に行き当たるとよいのですが。
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by stemcell | 2009-03-30 23:16

イチローと研究

WBCが終わりました。日本2連覇。すばらしいですね。サッカーとは違います。

今大会イチローは不調でしたが最後の最後で決勝打を打ち全て帳消しにしました。彼のコメントではその打席に立っているとき、日本ではこのシーン凄い視聴率でここで打ったら俺ほんとになにか憑いてるなーとか思っていたそうです。これがイチローの強みとの今日の新聞スポーツ欄の批評。ちょっととんちんかんな気もしますが、松井も含め常に自分を客観的に見ることができるのが一流選手の特徴なのだとか。

私も自分の研究成果に対して客観的に見てどのくらいのものなのか結構考えたりします。だから一流の科学者とはまったく思いませんが、他の人はどうなのでしょうか。そちらかと言うと客観的に自分の研究を顧みずに突き進む人の方が結局は良い成果を上げているようにも思います。テーマはともかく実験のアプローチは客観的に見る必要がありそうですかね。
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by stemcell | 2009-03-27 22:08

研究分野

私が本格的に研究を始めたのは今から10年ほど前です。当時は自分が面白いと思う研究をやっていれば満足でした。それなりに論文も書けるし、次の行き先も見つかりました。しかし気がつけば自分の研究をおもしろがってくれる研究者がだいぶ少なくなってきたように感じます。

昔の分子生物学者の多くは大腸菌を材料に研究していましたが、今はほとんどいなくなってしまいました。大腸菌の生理学に関してかなり細かいところまで調べていたはずですが、そのような膨大な知識はどこかへ行ってしまったようにも感じます。例えば今の私の研究分野もそのような状況になりそうな気配があります。

研究テーマはどうのように設定したらよいのか最近悩みます。自分がただ面白いと思うことをしていればよいのか、ある程度流行の(もしくは流行る可能性のある)多くの人が興味を持ちそうなテーマを取り入れるべきか、いろいろ考えます。自分の力量以上のことは出来ないので、その中でテーマを設定することになるのですが、その際時には研究分野をガラッと変える必要があるようにも感じます。

研究分野を変える時は大々的に変えてなんら差し支えない、という意見をなにかの本で読んだことがあります。しかし同時に分野を変えるとその研究者は前のコミュニティーから直ぐに忘れ去られる、とも聞きます。分野を変えるとそこでまた一から業績を作り上げる必要があるのです。

回りはどうかというとあまり分野を変える人はいないように感じます。特定の分野で業績を積み上げかつその分野が適度に流行っている人の評価が良いように思えます。変えるにしても一回若い頃にと思った方がよさそうです。
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by stemcell | 2009-03-25 22:40

WBC

ワールドベースボールクラシックを今やっています。結構視聴率は良いようです。私も夜のダイジェストは欠かさず見ています。試合を見ていると日本が世界と戦えるのはサッカーよりはやっぱり野球だな、と思います。ただ今の子供たちにはサッカーの方が人気があるので(私が子供の頃は圧倒的に野球でしたが)当然運動神経の良い子もサッカーに流れていると思います。そうすると10年後はどうなるかわかりません。

宿敵韓国には勝ったり負けたり。これはまあ当たり前です。シーズン首位のチームだって特定のチームに勝ち続けることはないのですから。しかしなんで同じアジア地区から出てきたチームが米国に行っても何回も試合をしなければいけないのですかね。どこかおかしい。前評判の良い日本と韓国が米国とあたらないように仕組まれている、と聞きましたがほんとのような気がします。
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by stemcell | 2009-03-20 23:03

怪しげな人間とは

先日町内会の役員になったという話を書きました。最初の仕事は来年度の町内会費集めです。私の受け持つ班は15世帯ほどです。前任者に日曜日の夜はだいたいみんな家にいるのでその時に回収に行くとよいよ、と聞いていたので先週その旨を書いた紙を各世帯のポストに投入、この前の日曜日に各家を回りました。

妻が回る予定でしたがその日の午後原因不明の下痢と嘔吐にみまわれ、結局私が回収に行きました。だいたいの家は快く会費を払ってくれました。しかし旦那が会費を回収に行くのは稀なのかかなり怪訝な顔をする人もいました。きっと見ず知らずの人間が町内会費回収と偽って金をだまし取りにきたと思ったのでしょう。会費と引き換えに渡す町内会発行の領収書をその場でまじまじと点検する人も結構いました。まあ逆の立場になったことを思えばしょうがないかなと思いました。前もって予告状を出しておいてまだよかったです。
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by stemcell | 2009-03-17 22:58

同級生

先日近くのショッピングセンターで昔の同級生にバッタリ出会いました。顔を見たのはかれこれ15年ぶりです。彼とはクラスは一度も一緒になりませんでしたが、軽音楽部の同期でかつ通学路が同じだったのでよく一緒に帰ったりしたものでした。

彼は卒業後すぐに(文系)就職したので、会社員としてのキャリアは15年以上になるはずです。働き盛りで今は中堅も良いところ、最も期待される人物の一人になっているに違いありません。今回は休日に会ったということもあり昔と雰囲気はあまりかわからなかったですが、普段はきっと会社員としてバリバリ働いていることでしょう。

私は彼と同じ時期に卒業した後大学院で博士課程まで進みましたが、大学院在籍時2、3回彼に会ったことがありました。その時彼に「なぜ金を払ってまで勉強するのか?」と聞かれたことを憶えています。彼の記憶はそこで止まっているので、今回15年ぶりに私に会った時、いつまでも学生をしていた私と、既に結婚して子供がいる現在の私とがうまく結びつかなかったようでした。

とはいえ私は基本的にずっと学校(もしくは研究所)にいたわけなので、彼よりよっぽど昔と変わっていないと思います。なぜか彼に会った後、私が今会社員として働いたらどうなるか?やっていけるか?彼にかなうようなところはあるか?と考えてしまいました。

研究職ならまあやっていけるでしょう。文系職種の場合、悩みますが現在の私がやって行けるとすると海外の人との交渉でしょうか。これは多くの研究者も同様と思います。研究者を目指す人間は若い時から個人レベルで海外の人間と協力もしくは競争をしながら仕事(研究)を進めているので、私に限らず多くの研究者は同年代の人に比べ、その能力はかなり高いのではないかと思います。

数日前ポスドク後のポストの問題(ポストポスドク問題)のことを書きました。研究者を目指した全ての人に希望する職場を与えられない、という問題です。結局は企業に職場を求めていくことになると思いますが、この上に書いた能力は就職の際売りになるのでは、と思いました。まあそんなことが人よりできても他が出来なければダメなのかもしれませんが・・
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by stemcell | 2009-03-15 23:35

今年度の研究テーマ

4月から新しい学生が研究室に配属されます。その人たちのテーマを他のスタッフと相談し始めています。今年は私も数人の学生にテーマを与えることになりそうです。今の学生の多くは修士課程に進むので、計3年間でかたちになるようなテーマを設定するのが理想です。

といっても研究というのはやってみなければ結果がどう出るかどうかわからないものなので、厳密にテーマを設定はできません。しかし、前にも書いたように、一応の研究のゴールは設定する必要があると思います。明らかにしたい(してほしい)ことはなんなのか、そこを明確にし、後は一緒に試行錯誤して行くのがよいと思います。
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by stemcell | 2009-03-10 20:39

よい貢献

数年来私が調べているタンパク質に関する論文が今週他の研究者によって発表されました。私の知らない研究者で、私の属するコミュニティーとは違うグループに所属している人たちと思われます。よく学会で一緒になるこのタンパク質に関する仕事をしている研究者らは、タンパク質の化学的性質(protein chemistry)に興味を持った人たちが大半です。しかし今回の著者らはある生物の示す表現型に興味をって仕事をしていたらこのタンパク質に行き着いた、ということのようです。すなわち今回このタンパク質の生体内での役割を遺伝学的に明らかにしました。

私もこのタンパク質の生理的役割に興味があったので一時期実験をしたことがありました。一次構造(タンパク質のアミノ酸配列)から予想される酵素活性の有無を調べました。しかし予想された活性は見られずそのまま頓挫していました。よく調べると活性ドメインの全体の構造は似ているのですが、重要なアミノ酸がいくつか保存されていないことはわかりました。

今回の彼らは非常にきれいにそのタンパク質の役割を明らかにしていました。どうもこのタンパク質は特定の酵素活性は持たず、他のタンパク質と直接相互作用することでシグナル伝達を行うタンパク質であるようです。

私が知りたいと思っていたことが全てそこで明らかにされていました。へえ〜という感じで感心しました。こちらも責め手を欠いていたので”やられた”という感じはあまりありません。しかも私が行っていた生化学的な解析を行う上で有用となる情報がかなりあります。よい仕事をしたとき科学者は”良い貢献だ”という表現をしますが、これはそんな理由があります。まさに良い貢献なのです。

今回の場合のように異なるアプローチで仕事をしていたら同じタンパク質に行きついたり同じ結論が導き出されたりすることはよくあります。しかも(今回は違いますが)大抵それが同じ時期にわかってくるのですよね。そのような場合上手く論文発表を申し合わせることができると同時に良い雑誌に載ったりします。学会はそのような情報を仕入れる最も良い機会で、参加することはその点からも重要と言えます。もっとも私はそんな目にあったことはあまりありませんが。
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by stemcell | 2009-03-06 21:12

町内会

私たちは4年ほど前今の場所に引っ越してきました。そこには多くの場合と同様町内会があり、引っ越しと同時にその会に入ることになっていました。引っ越してきて2年はその会の役員になる必要はないとの取り決めがあるのですが、私たちは2年後に2番目の子が生まれたので、更に2年役員の職回りを免除されていました。しかしその免除期間も終わり、来年は役員の当番が回ってきます。その最初の会合が先日ありました。

私のいるX丁目は更に12グループにわかれ、各グループから班長と部長の2人が選ばれます。私は班長になりました。もう一人の人が子供の急病で出席できず、名簿順にしてしまえと私が班長になりました。班長の仕事はとりあえず町内会費の回収です。年3000円ほどですが、集まればかなりの額です。今迄どのように使われているのか考えもしませんでしたが、今後会の活動とともにかなりはっきりわかってくるでしょう。

町内会の会合に出席したのは生まれて初めてでしたがとても興味深かったです。普段出席する会議は会社内もしくは取引先等なんらかの仕事のつながりがある人間と行うことが多いですが、町内会では当然回りはまったく仕事の利害関係のない人たちです。今回は自己紹介程度でしたが、今後どのような会議が展開するのか興味があります。

最近近所を歩いているとき会議に出席していた人を見かけました。その時今まで抱いたことのなかった親近感のようなものを感じました。人間関係が広がったようで町内会の役員をやるのもそう悪くはないかなと少し思いました。
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by stemcell | 2009-03-02 20:18