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遺伝子組換え生物

私達の研究分野では頻繁に遺伝子組み換え生物を作成します。通常目的とする組換え生物を作出する過程でその数より更に多くの組換え生物(その多くは大腸菌です)を作る必要があるため、その数と種類は非常に多くなります。一つの実験のために数百の組換え体を作る事も珍しくありません。

このような組換え体は実験室の外に出ないように2つの措置を取る事になっています。一つは“生物学的封じ込め”と呼ばれ、遺伝子組み換えをおこさせる生物には特定の遺伝子を欠損しているものを使い、特定の生育条件でしか生きられないものをできるだけ使います。このことで実験室の外では優先的に増殖できないものを使用します(漏れても生きていけません)。もう一つは“物理的封じ込め”で、実験で作出した組換え体を外に出さないように様々な措置を講じることです。後者の基本は実験で使用した組換え体やそれが付着した物品は熱処理をして生物をすべて死滅させてから廃棄することが決められています。

最近神戸大のある研究室が、この熱処理をしないで組換え大腸菌を捨てていた(おそらく流しに)、というニュースを見ました。これは先に述べた”物理的封じ込め”を無視した行動となります。

実質的には組換えに使用する大腸菌は”生物学的封じ込め”の対象でしょうし、そもそも危険な遺伝子を組換えているわけではないでしょうから、漏れても実験室外でなにか悪さをすることはないと思います。しかし規則で決まっている以上この研究室の行いは責められて当然で、許されるものではないでしょう。悪さはしないんだ、だから規則は破ってもいいのだ、という行動は、研究者としてやってはならない行為と思います。

更に問題なのはその廃棄の仕方をその研究室のボスが主導していたという点です(そう聞いていいます)。おそらくこの主宰者はかなり昔からそのような処理の仕方をしていたものと推測します。ひょっとするとその人のボスだった人もそのような処理の仕方をしていたのかもしれません。その研究室出身者もその後同じような処理の仕方をしているものと思います。そのようなことからこの研究室主宰者は多くの責任を取らざるを得ませんし、そうすべきと思います。
by stemcell | 2008-04-14 20:59
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