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実験の失敗

研究者は試験管なんかを使って毎日実験していると思う人が多いと思いますが、実はそうでもありません。大学の教員になると、助教の人はともかく、大抵の人は実験をしません。自分の部屋の机に座っているか会議にでるか、そんなところです。昨今大学教員は学内の雑用に忙しいのでラボに足を踏み入れない人も多いです。よくテレビである研究室を訪問したりする番組で、教授が白衣を着てラボをうろつくシーンがありますが、あれはほとんど作られた映像で、ふだんそんな姿は多くのラボでまず見かけません。

では誰が実験するのか?それは多くの場合学生やポスドクです。実験操作は先輩学生が教える場合が多いでしょう。教員は机に座って実験結果を見てあれこれ次の実験を指南するだけです。これは世界共通です。今回ノーベル賞を受賞した北大の鈴木さんもノーベル賞をもらえるような実験を自分でやって結果を出したわけでは(十中八九)ないのです。おそらく当時の学生か助手の人が実際的にデータを出したものと思われます。

ではその学生か助手の人がもらうべきでは?という考えもなくはないですがしかし、サイエンスの世界ではそうはなりません。実験はうまいにこしたことはありませんが、重要なのはその組み立て方です。なので、当たり前ですが研究者として自立するには実験がうまいだけではダメで、うまい研究プランを練り、実験を組み立てられるようになることこそが重要なのです。

前にも書きましたが、日本の学生は実験操作は世界的に見て早くてうまいですが、実験を自分で組み立てるのは総じて苦手です。実験がうまい下手を友人と議論するより、手を動かす前にもう少し指導教員と実験プランを練るとよいと思います。そして一つの実験が終わったらどんなデータでもすぐに相談に行くことです。データの解釈は経験がものを言います。あれこれ一人で考るよりずっと良いですし自分の経験値も上がります。あと立てた仮説は実験結果によって破棄されるもしくは大きく変わりうるものとの認識が甘い学生も多いように感じます。私は今のポストを得る前に5、6カ所の研究を転々としましたが、できる人ほど仮説をあっさりと捨てます。ときには数ヶ月かけた実験が無駄になるかもしれませんが、仮説を一つ破棄できたことが収穫と思うことが重要です。そして決してデータをねじまげないように。
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by stemcell | 2010-10-07 23:03
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