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論文査読

最近ある雑誌からある論文のレビュー(査読)を頼まれました。科学雑誌は無数にありますが、多くの雑誌はまず著者が原稿を送り、それをエディターがざっとみてこの雑誌にふさわしいものかどうかを判断し、その後その原稿で扱っている研究分野と関係が深い研究者数名に査読を依頼します。査読者はその原稿を細かに見て掲載するのにふさわしいかどうかをエディターに報告します。エディターはその意見を基に、1)そのまま掲載可、2)少し直したら掲載可、3)実験を追加し大幅に修正したらもう一度審査する、4)掲載不可、のいずれかの判断をします。

今回の論文は数ヶ月前に一度査読したものでした。そのときの私の扱いは3)でした。いくつかデータに問題があったので。私のほかに2人査読者がいました。それぞれ2)と4)の扱いでした。おそらく2人の意見が分かれたので、私を3番目の査読者として頼んできたようでした。結果エディターは3)の扱いで最初の原稿の返事を著者にしたようです。今回はその直しの原稿でした。

今回のような再投稿の場合、著者は3人の査読者のコメントに答えるような手紙を同封するのが常です。今回もそのような手紙が付いてきました。そこで初めて他の2人の査読の結果を知ることができたわけです。だいたい似たような意見でしたが、2)の扱いをした査読者はかなり甘いです。おそらく著者の知り合いでしょうね。4)の扱いをした査読者の意見はもっともなものが多かったですが、かなりきつい。今回の論文で提唱しているあるタンパク質の挙動に関するモデルに同意しないグループの一人でしょう。現在このタンパク質の挙動に関してはいろいろな説が乱れ飛んでいるのです。実は私の提唱しているモデルも今回の論文のモデルとは合いません。なので当然きつい査読になります。そもそも議論が理屈だっていないところもあるのでなおさらです。更に追加実験したデータが最初の投稿時のデータとかなりかわっており、信憑性も問題になります。我々の最近の論文も引用していないし議論に含めていません。そもそも議論にも矛盾があるので今回も3)の扱いでしょうね。

というわけで論文掲載の可否はたった数人の査読者の意見で決まる場合が多く、多分に運が左右する場合も結構あります。なんでこれが、という論文が掲載される場合も多いですし。

そういえば最近、実験結果に問題が問題なく行われていれば基本的にオンライン上で全て発表する、というネット上だけの科学雑誌ができました(つまり査読がかなり甘い)。冊子にならずオンラインだけでの発表なのですが編集代として著者から掲載料は取ります(だいたい一報15万円)。雑誌を見る人からはお金を取らず著者からお金を集めて運営するのです。これにはいろいろな批判がありましたが今はみな認めつつあります。その雑誌、インパクトファクターと呼ばれる雑誌の科学的レベルの指標となる値も結構高いようです。そのうち人気の雑誌になるかもしれませんね。
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by stemcell | 2010-08-03 22:20
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